物言う株主(アクティビスト)が日本株市場への攻勢を再び強めている。企業の経営に影響を及ぼす狙いがある「重要提案行為」を目的に株を大量保有するケースが相次ぎ、2017年は103件と08年以来9年ぶりの高水準になった。物言う株主は世界的なカネ余りや株高で資金力を増しており、日本で導入された企業統治指針も活動の追い風になっている。
投資家が株を5%を超えて保有したり、保有比率を引き上げたりする際に提出する大量・変更保有報告書を野村証券が調べた。日本の情報開示ルールでは、株主還元や取締役選任などを提案する可能性がある場合は保有目的に「重要提案行為」と明記する決まりだ。
物言う株主の活動は00年代半ばに活発になり、米スティール・パートナーズはサッポロホールディングスやブルドックソースなどに相次いで経営改善要求を突きつけた。重要提案行為の提出件数は07年に128件、08年には133件に達した。
だが08年秋のリーマン・ショックを境に投資家がアクティビストファンドから資金を引き揚げ、活動は下火になった。攻撃的な要求に対する日本社会の反発が強まったことも活動を難しくした。
ここにきて物言う株主の日本株の大量取得が増えている裏には世界的なカネ余りと株高がある。低金利で運用難に直面する年金基金などの機関投資家が、より高い利回りを求めて資金を託すようになってきたからだ。
東京証券取引所が15年から上場企業に適用する企業統治指針も活動を後押しする。物言う株主が求める資本効率の引き上げに対する意識が日本企業側にも広がり「提案が受け入れられる土壌ができつつある」(野村証券の松浦寿雄氏)という。
物言う株主の提案で最も多いのは株主還元だ。旧村上ファンド出身者が設立した国内ファンドのストラテジックキャピタルは内田洋行や図書印刷などに増配を要求した。使い道がない現預金をため込む企業は物言う株主の標的になりやすい。
他のファンドによる買収価格に異を唱える例も出てきた。英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは、米ベインキャピタルがアサツーディ・ケイに実施したTOB(株式公開買い付け)に対し「価格が低すぎる」と反発した。
物言う株主が株を保有する企業の株価はおおむね堅調だ。対象企業の17年の株価上昇率は平均33%と日経平均株価(19%)を超えた。提案が株価を押し上げれば他の投資家にも賛同が広がりやすく、物言う株主の攻勢はさらに強まりそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25953310Q8A120C1EA2000/